(2004.7)
しっかりとテロワールの反映したワインは、アルザス随一の長熟タイプ
アルザスの中心地であり、オー・ラン県の県都でもあるコルマール市のすぐ西に位置するテュルクハイム村に
ドメーヌ
はある。40代後半のオリヴィエ・フンブンレヒト――フランス人で初めて、非常な難関であるマスター・オブ・ワインの資格を取得――が運営するが、ドメーヌはフンブレヒト、ツィント両家によって1959年とそれほど古くはない時期に設立された。とはいえ以前から双方ともにワインづくりに従事しており、なかでもフンブレヒト家は1600年代の半ばまで由緒をたどることができる古い家柄。
当初、数ヘクタールの地所で始めたドメーヌも、今では10ヘクタール以上のグラン・クリュを含む総面積40ヘクタールほど――その半分は本拠地テュルクハイムの村にある――の規模の大きいものに成長。また、1992年にはテュルクハイム村にある単独所有畑ヘーレンヴェグのなかに近代的な設備とモダンなデザインの醸造所も完成した。
今でこそテロワールに関する議論は盛んだが、ドメーヌではワインづくりの重要な要素として、以前からテロワールに着目。フランスでも非常に多様なテロワールが見られるここアルザスの地で、父のレオナールは60年代より優れた土壌の区画を次々と購入、オリヴィエにいたっては大学で土壌学を専攻するなど、親子そろってテロワールに一方ならぬ強い関心を寄せている。
出来上がるワインがぶどうの品種毎にその味わいと個性が異なるのは当たり前だが、フンブレヒトでは加えてテロワールによる違いが非常に際立っている。所有する地所のなかでもグラン・クリュに限って北からその特徴を見ると、最初がドメーヌの本拠地テュルクハイム村にあるブラント。雲母を含む砂質化した花崗岩によるカルシウム質土壌は、繊細で果実香の高いワインを生み出すため、リースリングに最適のテロワールとなっている。フンブレヒトでも所有する区画全てに、樹齢50年を数えるリースリングが植えられている。
テュルクハイムのすぐ南にあるヴィンツェンハイム村のアルザス最大のグラン・クリュがヘングスト。第三紀礫岩の基盤を、泥灰土にヴォージュ砂岩と石灰岩の礫が覆う土壌からは、長期の熟成に向く、強い酸味と肉厚の酒躯をもったワインが生まれる。ドメーヌの区画には樹齢50年に達するゲヴュルツトラミネールのみが栽培されている。
ゴルデールはテュルクハイム村から5キロメートルほど南、ゲベルシュヴィールの村にある45ヘクタールほどのグラン・クリュで、石灰岩を基盤とするに土壌はジュラ紀のウーライトが見られる。植えられているぶどうの多くはゲヴュルツトラミネールだが、ドメーヌではゲヴュルツとミュスカを栽培し、力強さのなかにもデリケートさを感じさせるワインを生んでいる。
フンブレヒトご自慢のモノポールがアルザス最南端、タンの村にあるグラン・クリュ、ランゲンのクロ・サンテュルバン。広さ19ヘクタール弱のグラン・クリュは、凝灰岩、茶雲母の入った安山岩などから成る基盤を、火山性の堆積物が覆っている。340メートルから470メートルとこの地方でもかなり高い標高で、最大傾斜68度というほとんど垂直に近い斜面にぶどうは植えられている。クロ・サンテュルバンにはリースリングとピノ・グリ半々に少々のゲヴュルツトラミネールが植えられ、非常に酸のしっかりしたミネラルに富んだワインを産出している。
テロワールを最大限に表現したワインを生み出すという点から、ドメーヌではぶどう樹の栽培は本格的なビオ=ディナミを採用。そのため20人を超える常雇いのスタッフが畑仕事に従事、きめ細かく日々の耕作にあたっている。収穫時、畑で徹底的にトリを付されたぶどうは直ちに醸造所に運ばれ搾汁されるが、その際、果汁やワインの移動はグラヴィティ・フローによる。栽培だけでなく、最終段階の瓶詰めまで、余計な負荷をかけず細心の注意をもってケアされている。
つくりで特筆すべきは、アルコール発酵からマロ=ラクティークまで全くの自然まかせという点。そのため、辛口に仕上がるワインでも数ヵ月、ヴァンダンジュ・タルディヴやセレクシヨン・ド・グラン・ノーブルになると2年近くかかる場合もザラ。そして熟成は赤のピノ・ノワールを除き基本的にフードルを用いるが、瓶詰めまでオリ引きは一切しない。
またテロワールは熟成によってこそ十全に体現されるとの持論から、より長期間の瓶熟を可能にする手段として、微量の炭酸ガスをワイン中に留めたままでの製品化を1997年のミレジメからおこなっている。これは、炭酸ガスはワインをフレッシュに保つという性質を応用したもので、マロ=ラクティーク発酵のガスを残したまま瓶詰めしたもの。そしてガスを抜けにくくするため、コルクの上にワックス・キャップをし、その上から金属のキャップシールをするという手間を掛けている。
さらにフンブレヒトでは、2001年のミレジメより甘辛目安をラベル右下に表示するようになった。残糖分の数値だけで厳密にクラス分けしたものではなく、甘酸とアルコール度数、それに酒躯など、ワイン全体のバランスから5段階に分けている。
indice1)
リットル中の残糖分が6グラム以下という、エクストラ・セックとでもいうべき辛口のワイン。
indice2)
残糖分10数グラム以下の、まろやかな辛口からほのかな甘口に仕上がっているもの。
indice3)
フンブレヒトの得意とする甘口仕上げだが、残糖分は20数グラムほどで極甘口とは異なる。
indice4)
残糖分30数グラムから40数グラムと極甘口のタイプ。
indice5)
ヴァンダンジュ・タルディヴとセレクシヨン・ド・グラン・ノーブル。
上にも記したように発酵は自然まかせのため、同じリュー=ディからのワインでもミレジメによってこのアンディスが異なることが儘ある。オリヴィエの、果汁からワインへの変身に不必要な人の手は介在させないというモットーからも避けられない点で、これはマーケティング的には難しい面があるが、テロワールに加え、ミレジメをごく自然に反映したワインこそがフンブレヒトをフンブレヒトたらしめている大きな魅力なのである。
なお2006年産のリリースより、エコセールのビオ=ディナミ認証マークの入ったバック・ラベルを採用することとなったことをお知らせしておきたい。
ドメーヌ・ツィント=フンブレヒト主要畑一覧
グラン・クリュ
単位:ヘクタール
ブラント――テュルクハイム村――
2.41
リースリング
2.41
ヘングスト――ヴィンツェンハイム村――
1.42
ゲヴュルツトラミネール
1.42
ゴルデール――ゲベルシュヴィール村――
0.94
ゲヴュルツトラミネール
0.58
ミュスカ
0.36
クロ・サンテュルバン・ランゲン――タン村――
5.5
リースリング
2.1
ゲヴュルツトラミネール
0.5
ピノ・グリ
2.9
アルザスAC――リュー=ディ付き――
クロ・ヴィンズビュール――フナヴィール村――
5.99
リースリング
0.65
ゲヴュルツトラミネール
0.9
ピノ・グリ
2.15
オーセロワ
0.93
シャルドネ
1.36
ヘーレンヴェグ――テュルクハイム村――
11.45
リースリング
3.13
ゲヴュルツトラミネール
5.85
ピノ・グリ
1.3
ミュスカ
0.75
ピノ・ブラン
0.24
オーセロワ
0.18
ハインブール――テュルクハイム村――
4.03
リースリング
1.06
ゲヴュルツトラミネール
1.02
ピノ・グリ
1.62
ピノ・ノワール
0.33
クロ・ジュブサル――テュルクハイム村――
1.29
ピノ・グリ
1.29
クロ・ホイゼレール――ヴィンツェンハイム村――
1.2
リースリング
1.2
ローテンベルグ――ヴィンツェンハイム村――
1.8
ピノ・グリ
1.21
オーセロワ
0.59
アルザスAC――ヴィラージュ――
テュルクハイム村
0.5
リースリング
0.5
ヴィンツェンハイム村
2.46
ゲヴュルツトラミネール
1.66
ピノ・グリ
0.5
ピノ・ノワール
0.3
ゲベルシュヴィール村
1.32
ゲベルシュヴィール村
1.17
ゲヴュルツトラミネール
0.15